だんドーン:第二十九話「桜田門外の悲劇」感想―直ちんのメタ台詞

緊迫した展開が続くここ数話、とうとう井伊直弼が命を落とした。今回のサブタイトルは「桜田門外の変」ではなくて「桜田門外の悲劇」。国を守ろうとした純粋な人間同士の凄惨な結末だった。

劇的な台詞を残した直弼

今回は直弼とタカの出会いも描かれた。何か事件が起こったというわけではなく、歯車として精進するのだと語った直弼をタカは好ましく思ったのだろう。地味だ地味だと評されてきた直弼らしいエピソードだ。

「終わりだ」と言う三男坊に対して「始まりだ」と答える直弼。ここは文字通り、国家が崩壊する始まりだとも捉えられるし、ここから激動の幕末ドラマが始まるよというメタ視点での台詞にも思える。忘れられないシーンになった。

子どものような表情に悲しくなる

もう死んじゃうことが何話も前から示唆されていた三男坊だが、直弼の首を掲げる表情が子どもそのもので、見てて辛くなる。お母さん僕ホームラン打ったよ、みたいな調子で、残酷だ。21歳ってほんとに子どもじゃん…「母(かか)どん」と呼ぶシーンはこれまでに何度かあったが、こんな切ないメッセージに帰着するなんて。生存者の証言ではよく聞き取れなかったとされていることの紹介が挟まれるのも見事な演出。

桜田門外のこの事件、ストーリーとしての山は犬丸の裏切りにあったと思うが、襲撃本番も生々しい重さだった。毎週80円(アプリで読んでる)、コミックスになったら数百円でこんなに楽しませてもらっていいんだろうか。発売即重版とは聞いているけれど、もっと売れてほしいな。身の回りに感想を言い合える人がいないから、行き場のないエネルギーはこうやって感想書くことでしか発散できない。