だんドーン:第33話「お利口さん太郎」感想―大事件の丁寧なエピローグ

今回は、可愛くて気が利き過ぎる太郎のその後が描かれた。桜田門外の変という大事件の周辺にいた一人の子どもの心情や周囲の気遣いが丁寧に語られていて、史実を虚構でふくらませた面白さを味わえた。

要所要所で猜疑の固まり扱いされる川路に笑わされるが、何とか幸せに生きる道を整えようとする優しさにはほっとする。伊牟田も大久保も、それぞれが太郎を思いやっている様子は温かい。

捨てられたら居場所がなくなっちゃう…という太郎の子どもらしい心情の吐露にはハッとさせられた。

それで結局大久保家で暮らすことになりました、というオチ。ここまで丁寧に川路や伊牟田の気遣いを描いてきて、最後は採用条件でいい方を選びました(゜∀゜)毒草や鶏鍋まで仕込んだのは何だったんだとなるまでの壮大なお笑い劇場だった。

しかし、このエピソードは蛇足ではなく大事なものだと感じられる。簡単に大久保家に引き取られたよ、と結論だけ示すのではなくて、太郎の周りの大人たちが一生懸命この子のことを考えて、右往左往して笑っちゃうような姿を見せることで、幕末フィクション世界にリアリティが生まれている。

人がサクサク死んでいく幕末で、太郎の居場所を守ろうとする登場人物たちから人一人の人生の重さが伝わる。犬丸が可愛がっていた太郎が平穏に暮らすことができるようになり、死を前にした犬丸の壮絶な覚悟が報われたことに安堵した。

そして成長した太郎は大久保の側を生涯離れることがなかったと語られて締められる。偉い人がSNSでこれは中村太郎だよ!と教えてくれてよかった。

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えっとこのエピソードをふくらませて太郎という一人の子どもに落とし込む泰先生の頭の中どうなっているの…すごい…

それにしても成長した太郎くんの想像図、お美しかった…