だんドーン:第32話「雪を背負う一本松」感想―凄惨な次男坊の最期と希望のある読後感

有村三男坊に続き次男坊も死んでしまった今回、涙を誘われた。しかし怒涛のお笑いがこれに続き、最後はしんみりとさせられる泰三子作品定番の面白さだった。

優しさの表れ方が壮絶

友と家族のために、介錯なしで切腹することを選んだ次男坊。優しい人柄が地獄のような結実を迎えるエピソードである。

母に、自分の魂はあなたの中に帰るからこれからも人生を楽しんでくれと伝えるシーンは胸が詰まる。

ここで泰先生へのインタビューが思い出される。先生は本作の連載直前に若くしてパートナーを急病で亡くされている。いつも通りおやすみとやり取りした翌朝には亡くなってしまっている状況下で、お子さん達には、お父さんの体は助からなかったけど、魂はお母さんの体の中にいるから、お父さんの声は聞こえるよ、と伝えたそうだ。

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なんかもう言葉がない。

怒涛のコントと人生が続く希望

そんな回なのに次々と繰り出される笑い。即席夫婦の茶番劇にチェスト侍が食らった薩摩の奥義、最高だった。

そしてマツはこの上なく辛い思いをしたけれども、希望を持って生きていくのだろうと思わされるラストだった。

今さらだけど有村三兄弟、前髪の数が出生順通りなんだね。気が付かなかった自分はうっかりである。

一点気になる要素

ちょっと気になっているのが、伊牟田が登場するたびに、川路が「伊牟田尚平」といちいちフルネームで呼びかけること。以前、日下部妻が「母(かか)どん」と呼ばれるシーンがちょいちょい挿入されていたけれど、こちらは直弼の首を刎ねた後の三男坊の言葉に繋がっていた。このフルネーム呼びの方は何かの意図があるのか、単に読者にキャラクターを思い出させるためだけなのか、よくわからないので引っかかっている。

次号休載。泰先生どうぞお体大切に、休みも確保しながら連載を続けていってほしいと思っている。